批評:TOKYO TRIBE
呼ばれて飛び出てTOKYO TRIBE二回ほど見てきました。
かつてこれほどまでに私を呼んでいた映画があっただろうか。
そう!
時代は、バトルラップミュージカル!
これが全てであり良くも悪くもここに帰結する作品でありました。
まあ結局クソだったけど。
舞台はTOKYO、地区ごとに争うトライブたちの一夜の出来事を描いた作品。
おそらく今後もなかなかされることはないであろうラップミュージカル。
とりあえず敷居が高い、というわけではないのだが、とにかくストライクゾーンが狭そうであることは確かか。園子温っていうブランドで見に来る人と、「お前何年ぶりに映画館なんて来たの?」みたいなスケボーやってそうなダボダボの服着たニーチャンネーチャンたちが、少ない座席の半数を占めていました。
ミュージカルと監督直々に発言するだけあって、物語は基本的にほぼずっと音楽とともに語られていくわけです。
褒めるべき点としてはまず、曲数が多いこと。ほんとうにずっと歌(というかラップ)とともに進行していくこの映画。そんじょそこらの「アナと◯の◯◯」なんかよりもずっと音楽に徹している姿勢に関しては、ワケの分からないバトルラップミュージカルを追求し続けている感じがしてとっても良い感じ。
出てくるキャラクターも一癖ある奴らがたくさん出そろっていて、特に練マザファッカーとかおいしすぎ。
ただ、こいつらの空っぽ具合が本当に目に余る。キャラが基本空っぽ。
きっと原作があるから本当はきちんとしたそれぞれの人間性や深みがあるはず、と信じたいところではあるが、とにかくキャラクターが浅いと感じた。
私的な話を混ぜて本当に申し訳ないけど、俺の作る作品に本当に似てるね!
その場のテンションや物語の流れに応じてこれと言って輪を乱すことも無く後半で突然超団結し始めるトライブたち。お前らのソウルはどうした!会ったらすぐ殺し合いの精神はどうした!もっと揉めろよ!本当は仲良しかよお前ら!
つーわけで感情移入なんてこれっぽっちもできない。
主人公のメラに関しても、本編でずっと海を執拗に敵対視するんだが、その理由が海の方がメラよりチンコがデカいから、というもの。ふざけるのも大概にしろくそったれ。
そんなクソ下らない理由のために人生の二時間を奪われた私×2。
メイン二人以外のキャラたちもひどいもんで、なぜ存在するのかわからない奴らだらけ。んでそいつらの量がとにかく多いもんだから、もうどうしようもないし物語の最後も収集がつかない。
メラ・・・ラッパーじゃないにしてはわりとマシなラップを展開。チンコのサイズにこだわって東京をめちゃくちゃにする。実は根は素直っぽい(ラストの発言より)。ただ荒っぽい役を演じているだけなので人間性とか全く浮き出てこない。くそキャラ。
海・・・典型的な博愛主義の「良い奴」。役者ではなくラッパーが本職なのでラップは上手いが演技は微妙。ただ良い奴を演じているだけなので人間性とか全く浮き出てこない。くそキャラ。
ブッバ・・・東京を牛耳る竹内力。オナニー中毒。演技がひどい。見たらわかる。ひどいと形容するより他に無い演技を見せつける。おそらく本人のせいではない。演技指導と演出をつけた人間が悪い。イカレた奴というそれ以外そいつを説明することができない程中身空っぽな役なので人間性とか全く浮き出てこない。くそキャラ。最後本当に適当に死んじゃう。これも酷い。
ンコイ・・・と言う名の窪塚。やはりイカレているがこいつの方がイカレ演技は上手い。しかしそれを超えるものは無い。そしてラップは下手。何故か窪塚が歌うシーンだけやたら録音が下手。なんでいるのかわからないキャラ。時計仕掛けのオレンジの部屋に住んでいる。
染谷くん・・・ストーリーテラーだけどラップが下手。それこそ中身の無いキャラ。
ヨン・・・こいつの存在が一番わからん。絶対何か意味があるはずなんだが全くわからない。格闘少年。演技は下手。どういう原理で行動しているのか全く掴めない。スンミに拘る。
スンミ・・・多分ヒロイン。おっぱいが見れる。新人女優らしい。演技はうまくないしラップも下手。格闘が良い。全ての元凶的存在。物語的には重要キャラクターであるが、人間性の掘り下げがやはり超絶浅い。特に逃げ出してくる理由となるシーンの薄さ等。
テラさん・・・という名のただの佐藤隆太。本当にただの佐藤隆太。みんながイメージしている佐藤隆太。あの佐藤隆太が殺されたんだぜ?俺らが立ち上がらなきゃ!みたいなテンションでトライブは団結する。原作ではちゃんとしたキャラらしい。本当に佐藤隆太の起用はやめた方が良い。ただの佐藤隆太。
エレンディア・・・叶美香。尋常じゃなくおっぱいをもみしだかれたりしてるのは必見。デカい胸はああやって揺れるんだなって本当に勉強になる。キャラもクソもない。
こんな奴らしか出てこない酷い映画である。バトルラップミュージカルと銘打つのであればまずラップミュージカルにおいては成功している。しかしバトルラップのシーンが一切無い。高校生ラップバトル大会みたいなやつのほうが遥かにちゃんとバトルしている。なのでこれはただのラップミュージカル。もしくは、格闘シーンはあるのでバトル&ラップミュージカルなら納得できる。
しかし結局上手くいっている、というか面白い試みなのはそこだけで、一瞬おもしれえこの映画!って気分になりかけるものの、終わったあとに思った以上に印象に残らない。そんな映画に仕上がっている。
そりゃあもちろん、人間とドラマがないからだもん。当然である。
そしてそんなクソ映画をさらにクソに仕上げる原因が「録音」にある。
とにかく、音がクソ。
なんでそんなに!?ってくらい録音が酷い。
誇張した言い方だとおもうのならば、皆さん是非どこぞのストアでサントラを視聴してみると良い。ンコイ登場シーンのラップなんて聞くに堪えない。
おそらく原因は狭いセットの中で録音したからであろう。
セット全体に響いた生声が実に下手に聞こえる要因となって聞こえるのだ。声も芯を捉えておらず、まるで低スペックのレコーダーで録音したんですか?状態。
せめてアフレコをするべきだと。と思っていたらちゃんとアフレコしてるところもある。経緯についてはよくわからないが、とにかくこの程度の音質で全国放映できてしまうのか日本よ。自主制作映画だってもうちょい気を配るぜ。って感じ。
以上の二点をふまえて二回目の鑑賞。
すると所見であれほど盛り上がってみることができた映画は、実に浅くインスタント的な楽しさだけが残る、軽い映画になっていた。
よく、原作ありの映画作品について「こんなの原作と違う。作風を全く踏襲していない」等と批判されることはあるのだけれど、今回の場合園子温が原作をじっくり料理して脚色した感が非常に薄い。
おそらく園監督はバトルラップミュージカルがやりたかったのではないだろうか。そのために東京トライブを取り上げたのではないだろうか。
ミュージカルと言う表面的な手法だけでなく、中身までぐちゃぐちゃに練り上げて脚本がなくともキャラが自立する映画であったなら。と3000円払った私は涙ぐんでから最後にまとめる。
以上、
TOKYO TRIBEでした。
最終感想、
「見なくてよし!!!!」